会長挨拶
この度、令和6年9月13日~15日の3日間、さいたま市で第29回日本臨床死生学会年次大会を開催することになりました。医学が目覚ましく発展してきた一方で、人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)の重要性も一層注目されるようになってきた中、本学会が埼玉の地で開催されることを大変光栄に存じます。開催にあたり一言ご挨拶をさせていただきます。
私は高知県内各地と埼玉県小鹿野町で25年以上にわたり地域医療に携わってまいりました。その中で私の医師としての方向性を決定づける方々との出会いにより、家族を含む緩和ケアの重要性を痛感し、以後診療に従事する中で常に最期まで支える医療を意識してきました。そのような中、私自身が良性疾患ではあるものの何度か手術を経験したことで、今生きていることの意味を考えるようになり、時には不安の中で私自身の実存の危機すら覚えるようになってきました。前回の本大会では「スピリチュアルケアの臨床的重要性」として、大会長の山田和夫先生のもとで実存の意味、スピリチュアリティについて多くのことを学びましたが、今まさにそのことを我が事として実感しています。今回のテーマを「生きていること、生きていくこと、死んでいくこと」としましたが、そこには自分の死生観についてあらためて考えている自分がいるのです。
多くの人は、生きていく中で老いていきます。その中で、少なからず心の病も持ち合わせていることでしょう。「生きていくこと」と「死んでいくこと」の間にある「老いていくこと」について東京大学名誉教授の松下正明先生より特別講演をいただきます。
また、地域医療の現場における死生観、仏教やキリスト教における死生観、哲学の観点から見た死生観、生命倫理の観点からみた死生観、ケース検討のセッションを設けました。そしてなによりも本大会は日本自殺予防学会との合同開催です。児童思春期から高齢者にわたるまで、自殺予防の基本から現状と対策、遺族のケア、各種セミナーなどを準備しております。多くの学びを得ることができると確信しております。
本大会を通して、あらためて生きることについて、命について共に考えることができればと思っております。皆様にとって実りの多い大会になることを心から祈念いたします。
2024年3月20日
第29回日本臨床死生学会年次大会
大会長 内田 望
(埼玉医科大学国際医療センター緩和医療科教授)