第19回日本臨床死生学会大会

問合せ先

第21回 日本臨床死生学会大会
大会事務局

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帝京科学大学医療科学部看護学科内
E-mail:n-onishi@ntu.ac.jp

ご挨拶

大会テーマ : サイエンスとアートとして考える「生と死」のケア

 「看護行為を支えるもの」として、従来から3つのSが必要であるといわれてきました。左の図は、高橋しゅん先生の書籍に引用されているイザベル・スチュアートの図をお借りしまして、正三角形の真ん中に、私はアートと記しました。

 正三角形の底辺のSはspirit、左辺のSはscience、右辺のSはskillです。すなわち、看護行為は、心情的もしくは情感的なものを基盤にし、サイエンスとしての科学的な知識と技術を持つことで、初めて成り立つものであるということを表しています。どの一辺だけが短くても長くても正三角形にはなりません。私たち、つまり看護や医療に携わる者は、この三つのSもって、個々に異なる患者さんに適した看護を実現することになります。それを、私たちはアートとして捉えています。大会テーマを『サイエンスとアートとして考える「生と死」のケア』にしましたのは、以上のような理由からです。

 常日頃、病を抱えて一日一日を一所懸命生きておられる方々を看護しておりますと、看護学の理論に基づいたサイエンスとしての看護だけではなく、情感を媒介とした家族による看護のように、看護師と患者さんとの心が通い合うまでの看護の必要性を、看護師一人ひとりが痛感するに至ります。それは、アートとして説明できるのではないでしょうか。私たちは、看護の心と知識と技術を用いて、患者さんの心の琴線に触れるような看護をしたいと思っています。医学においても、従来から「サイエンスに支えられたアートが必要である」と言われてきました。それは、本学会の顧問であられる日野原先生の御言葉でもあります。疾患そのものの治癒が難しくなった終末期においては、治療の手立てはなくても、心身の苦痛を和らげ、一日一日を大切に過ごすための看護は続けられます。それは、身体は治らずとも、心を癒すことができると考えるからです。

 本テーマの1日目のシンポジウムは、「病む人の『生の終焉』に寄り添うために」という副題をつけるとともに、サイエンスアートに支えられた終末期の「ケア」について、臨床の先生のみならず、生命倫理の先生にもお願いしまして、企画致して居ります。

 2日目のシンポジウムは、故平山正実先生に捧げるシンポジウムです。「遺された人と悲しみを分かち合うために」という副題をつけ、死にゆく人と遺される人への「ケア」の理解を深めたいと、企画致しました。

 御参加の皆様とともに、自らの人生の終焉、あるいは家族の看取り、遺される者の悲しみという人生の一場面から、生と死について考え、これからの医療や看護の在り方、社会での痛みの分かち合い方についても考えまして、サイエンスアートに支えられた、社会への意味のある提言に結びつけたいものと思って居ります。

平成27年2月吉日
第21回日本臨床死生学会 大会長 小山千加代
新潟大学大学院保健学研究科 教授
東洋英和女学院大学大学院死生学研究会 世話人代表