日本臨床死生学会 第18回大会 スピリチュアルケアの実現に向けて -理論・実践・制度-

日本臨床死生学会第18回学術大会開催概要

主題
「スピリチュアルケアの実現に向けて ―理論・実践・制度―」
日程
2012年11月23日(金・祝) 、24日(土)
会場
女子聖学院中学校・高等学校
会場住所
〒114-8574 東京都北区中里3-12-2
大会長
窪寺俊之 ( 聖学院大学大学院教授 )
大会事務局
聖学院大学総合研究所内
事務局住所
〒362-8585 埼玉県上尾市戸崎1番1号
電話
048-725-5524
FAX
048-781-0421
メールアドレス
thanatology@seigakuin-univ.ac.jp

大会の趣旨

【主題の説明】

  第18回日本臨床死生学会は「スピリチュアルケアの実現に向けて――理論、実践、制度」とした。スピリチュアルケアへの関心は日本でもすでに10年以上になり、死生学に関係する学術大会では、スピリチュアルケアが取り上げられて数年になる。宗教者、心理学者、医療者、社会福祉等の分野で研究が少しずつ進んでいる。また、スピリチュアルケアの若い研究者も徐々に増えていることは非常に望ましいことである。

 しかしながら臨床現場では、スピリチュアルケアが患者や家族に届いていない現状がある。スピリチュアルケアを担うチャプレンがおかれている病院・施設の数はわずかしかない。また、スピリチュアルケアとは何かを理解しているスタッフも少ない。病院・施設の理念としてスピリチュアルケアを掲げて所も少ない。それがために、患者と家族が「どこでも、いつでも」スピリチュアルケアを受けられる状態にはなっていない。この問題を解決することが今回の学術大会の目的である。

 そこで18回大会では、「スピリチュアルケアの実現に向けて―理論、実践、制度」と題して、三つの柱を立てた。スピリチュアルケアの理論的研究、スピリチュアルケアの実践報告、スピリチュアルケアを具体化するための制度的整備を追求する。
 また本学会では、昨年の東日本大震災を受け止め、また今後のスピリチュアルケアの責務を思い、プログラムの中に、「東日本大震災を受け止めて」とのシンポジウムを設定した。

 大会のゲスト講演者に、カナダ・ウエスレアン大学のポール・ウオン博士お招きした。ウオン博士は、ヴィクトル・フランクルのロゴ・セラピーの研究家・実践家で、意味中心カウンセリング研究所長(カナダ)。カナダのトロント大学で博士号(PH.D.)を取得。トロント大学、ヨーク大学、カルホルニヤ大学等で教鞭を取る。『意味への問い』の書物をはじめ、多数の論文を執筆。「国際実存主義心理学と心理療法」誌編集長を始め、「人間性心理学とグローバル・マネージメント」「ストレス医学」「カナダ行動科学」「死の研究」誌などの編集に携わっている。

 今回の大会では、できるだけ多くの方の意見と参加を募りながら、大会を作り上げたいと考えている。企画委員を学会の内外に求めたのは、学術大会を幅広いものにし、臨床の場を視野にいれた研究大会にしたいからである。医療制度や経営的観点から、スピリチュアルケアについての専門家の意見も聞きたい。
 その他、スピリチュアルアセスメントの問題、スピリチュアルケアの専門家不足(人材不足)、ケアの医療費支払制度の欠除(医療制度)なども大きな課題である。現在、スピリチュアルケアをめぐってこのような問題が課題となっている。

 この大会には、看護師、医師、チャプレン、ボランティア、ソーシャルワーカー、行政官、宗教家、哲学者など広い人が参加できるものにしたい。
 このような沢山の問題を今回の学術大会で扱いたいと願っている。

【スピリチュアルケアの理解の多様性】

  スピリチュアルケアが問題になったのは、終末期がん患者へのケア。医師、看護師は身体的ケアに携わる。ソーシャルワーカーや臨床心理士は、心理的ケアに携わる。しかし、終末期がん患者が死後の生命に強い不安をもったり、あるいは深い罪責感をもっている場合、現在の日本の医療制度にはケアする人がいない。アメリカやヨーロッパではチャプレンが常駐していて患者と家族の霊的苦悩に対応する制度が整っている。キリスト教が背景にあって患者や家族へのスピリチュアルケアが整っている。

 今日、日本ではスピリチュアルケアの理解に多様性がある。キリスト教的、仏教的スピリチュアルケアがそれである。しかし、一方で一般的に宗教を重視しない日本では一部のキリスト教病院や仏教立病院でしかスピリチュアルケアがなされていない。将来一般病院でもスピリチュアルケアが受けられるようになるためには、スピリチュアルケアの理解を宗教の枠を超えた枠組みを考える必要がある。おそらくそれは「魂へのケア」と呼べるかもしれない。患者・家族が主役になるケアのありかたである。宗教、心理学、精神医学が患者に仕えるケアが求められている。
 日本でもいくつかの理論が出て来ているので、その検討も加えながら臨床に役立つスピリチュアルケアが構築されることを、今回の学術大会の目的にしたい。

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